「白金・高砂の人が集まるコミュニティになれたら」美容室ditto hair designが目指すこと

ditto hair design_高砂

美のメンテナンスに欠かせない美容室。中央区白金周辺にはおしゃれなサロンがたくさんあります。なかでも2022年3月1日にオープンした「ditto hair design」は開放感のある広々とした20坪の空間とスタイリッシュな雰囲気が印象的なサロンです。

「美容師だけではなく、ネイリストやセラピストの方にもスペースを使っていただけたら。他にも、ここで毎週火曜にお弁当を販売する方も出てきているんです。とにかく広いので、店休日の月曜にヨガレッスンや勉強会のような、広い場所が必要なイベントをやっていただいてもいいかなと考えています。美容室というカテゴリでは収まらないスポットになっていけばいいなと思っています」

こう語るのは「ditto hair design」オーナーで美容師の坂東秀幸さん。「ditto」は「私も同じ」という意味で、「“お客さまと一緒に共感し、共有し、毎日来たいお店”を目指す」との想いが込められています。お店についてお話を伺いました。

お客さまが笑顔になれる提案を

ditto hair designの前には中央区清川にある美容室に勤めていた坂東さん。美容師としては珍しいキャリアを歩んでいて、それらはすべて今の「在り方」につながっていて、とても興味深いものですが、先にお店のことを。

ナチュラル&オーガニックケアブランドtrackの「トラック オイル」は使い終わるとディフューザーとして使える2way仕様

全4席と少人数制で、なかには半個室も設けられている店内は、白を基調とした清潔感あふれる空間です。スペース中央には大きなテーブルが置かれ、ditto hair designで使うヘアケアアイテムや販売しているアイテムを試すことができます。坂東さんが「いいな」と思うものを取り扱っているといいます。

なかには話題を集めるパーソナライズスキンケアサービス「cocktail graphy(カクテルグラフィー)」も。ほとんどのものがネットで買える時代、何をどこで誰から買うかはひとつのストーリーになります。待ち時間に「体感」して、ものとの出会いを楽しんでほしいとの狙いがあるのです。

お客さんを楽しませたいとの想いをベースに持つ坂東さんが大事にしているのは、お客さんにとって何がベストかを考えて、そのときどきで適切な提案をすること。「白髪染めを勧めない」「縮毛矯正を勧めない」ことも一例です。根底にはヘアケアに対して「〜しないといけない」といったプレッシャーを感じてほしくない、との考えがあります。

「白髪が増えてきたから、髪の毛がまっすぐではないから、という理由で白髪染めをしないといけない、縮毛矯正をしないといけないと思うのは、お客さまにとって『やりたい!』とポジティブに感じることではないんですよね。なので『〜しなければいけない』と嫌々思っている方には『〜しなくていいですよ』『〜しない方法でなりたいイメージを作りましょう』と提案することにしています。商売っけがないねと言われることもありますが(笑)、お客さまに変化を喜んでいただくのが僕たちの仕事ですから」

具体的には、気が進まないものの、白髪染めしないといけないと思っているお客さんには、ハイライトを入れて髪色を明るくする方法を提案するといいます。ケアも面倒ではなく、ぱっと華やかな印象になるからです。もちろん本人が「〜したい」というポジティブな気持ちで、それらの施術を望む場合は要望通りにします。すべては「お客さまには笑顔でサロンを後にしてほしい」という理想に基づいているのです。

5年間の営業職を経て美容師に戻る

そんな坂東さんは自分の店を持つまで、どんな道のりを歩んできたのでしょうか。18歳で地元・山口県から福岡に出てきて、美容専門学校に通いながら福岡の美容室でアシスタントに。学校と仕事との両立は大変で、時間もお金もない生活から脱け出したいと、なんとブロードバンド販売の営業職という異業種へと転職します。ちょうど20歳のときでした。

「単純な発想ですが、手っ取り早く稼ぐには営業だなと思ったんです。ヤフーや楽天、ソフトバンクなどのIT企業が勢いにあふれていた頃です。もともと接客が好きで、営業も性に合っていたのか、5年ほど勤めていましたが、営業の仕事は『売ったらおしまい』なんです。それが僕には物足りなく感じて、『お客さまと長く付き合える仕事をしたい』と思うようになり、美容師という仕事への関心が高まっていきました」(坂東さん、以下同)

そんななか、実家に電話する機会がありました。母から「美容師になるって言ってたのに、あんた何してるの」とツッコミが入ります。加えて「もう一度美容師を目指すなら応援する」との心強いプッシュも。坂東さんは母の想いをありがたく受け取り、在籍を残してあった美容専門学校に連絡します。そして、残りの日数だけ通学・卒業して、美容師資格も取得したのでした。

すでに25歳になっていた坂東さん。知人が経営する美容院に雇われ、アシスタントとして美容師のキャリアをスタートさせます。ただ、周りのアシスタントは20代前半で、自身と同世代はもっと先へ進んでいて、加えて世の中にサロンはたくさんあるからこそ、「普通にしていたら勝てない」と気づきます。

美容師×◯◯の掛け算を目指して

「美容師×何かの掛け算で勝負しよう、と思いました。独学でデザインや広告を学び、自分でチラシやLINEスタンプも作りました。デザインソフトはIllustratorを買うお金はなかったので、無料でも十分に使えるInkscapeを使って。経験を積みたかったので、近所や馴染みの飲食店に声をかけて『メニュー表とか作りますよ』と無償で制作を請け負っていた時期もあります」

そうして影で専門外の勉強や実制作を進め、デザインも広告もできる美容師として密かに知られるようになっていった坂東さん。その後も「自分らしい掛け算」を続けていきます。スタイリストになったあと、使うようになったのが一眼レフカメラでした。ちょうどInstagramが広がり始めた時期で、当時は品質の良いカメラで撮影した画像を投稿している人は少なかったことに着目。

「お客さまのヘアスタイルを撮影してインスタに載せるようになりました。すると、それを見た新規のお客さまが『自分も撮影してほしい』と続々と来てくれるようになったんです。今もですが当時もホットペッパービューティーからサロン検索・来店されるお客さまが多いなか、少しでも別のチャンスがないかと模索していました」

後輩のヒロトさん(左)とのやりとりを見てお客さんから「漫才みたいですね(笑)」と言われることも

最後の2年は完全歩合制で、7年在籍したサロンから独立したのは自然な流れでした。美容師としてやっていくと決意した25歳のときから、自分で店を持つと決めていたからです。営業職をしていた頃「自分で最初から最後までやるには、経営者になるしかない」という意識がありました。

ユニークなキャリアを持ち、遅咲きの美容師として、自分の店を持つようになった坂東さん。美容室の外へ出て多様な人生経験を送ってきたオーナーだからこそ、さまざまな髪悩みに丁寧に寄り添い、お客さんをハッピーな気持ちにして、すこやかに送り出すことができるのでしょう。

>>「ditto hair designオーナー/美容師 坂東秀幸さんってこんな人」に続く

取材協力/ditto hair design

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Text+Photo/池田園子

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