こんなところにグリーンショップが! 平尾を歩いていて見つけたお店「prowntume」。外にたくさんの植物が並び、中を覗くとさらにいろいろな植物が。しかし、その後お店に入ってみると、個性あふれる植物たちのほかに、ジュエリーの取り扱いもあることがわかりました。
店名の由来はprops(小道具)+own(自分自身の)+costume(衣)から来ているといいます。「人生は舞台のようだから、そのときどきで必要な小道具に出会ってもらいたい」。そんな思いで、2014年に店を構えています。
prowntumeをご夫婦で経営する、ジュエリーブランド担当のYumさん、植物担当の西山良さんにお話を伺いました。
「消えゆく美しいもの」を形にした装飾品
今でこそ種類やボリュームともに、店内外で存在感を放つのは植物ですが、商品として販売を始めたのは2021年のこと。オープン当初から取り扱っていたのは、コンテンポラリージュエリーとレースアクセサリーです。ジュエリー作家のYumさんが手がけています。
ブランドの顔となるのは、刹那の美しい泡を表現した「orfoague(オルフォーギュ)」シリーズで、2006年のブランド誕生とともに誕生しています。独特な世界観からデビュー後すぐに注目され、他ブランドとの企画に声かけされることも多々。
「シャンパンをグラスに注いだときの泡や海の泡など、すぐに消えてしまう美しい刹那の泡を形にして留めたいと思い、アクセサリーにしています」(Yumさん)
素材に縛られない、自由なものづくりを
レース編みからスタートし、今もレース編みの作品を取り扱っていますが、貴金属の需要が高いことから彫金を学び、レース編みの繊細な表情を貴金属でも表現できるまでに。かろやかなつけ心地のレース編みベースの作品と、素材としての付加価値が高い貴金属の作品を両方製作できるのがYumさんの強みではないでしょうか。
しかし、Yumさん自身は、製作の“手段”を複数持っているものの、素材に縛られることなく、自身の想いや世界観を真っ直ぐに表現したいと考えています。
そして、おいしいものを食べたときに多幸感を抱くのと同じように、身につけたときに気負いなくうれしい気持ちになってほしい、との思いで製作していると話してくれました(ジュエリー好きとして大いに共感)。
ゴールドカラーのレースは日本人の肌に合うようにセレクトされた絶妙な色合いで、どんな色の洋服を着ても馴染みやすいのがうれしいところ。特にレース編みベースのアクセサリーは、金属アレルギーの方でも安心です。
「自分で育てたい!」と惚れた植物たちを仕入れる
ここからは、植物の話。植物好きな西山さんが店に植物を「趣味で」置いていたところ、セレクトを褒められたり、植物について訊かれたりする機会が増えていきました。そこで、植物も販売を始めてみようかと、小さくスタートしたのだといいます。
選定は植物担当の西山さんが行っています。「自分が育ててみたい!」と強烈に思うくらいに一目惚れした植物を関西にある植物園から仕入れているのです。そこへ足を運ぶたびに、自宅と店で植物と共生しながら日々学びを重ねている西山さんでも「この子、知らない……」「初めて見た!」と感動が積み重なっていくくらい、植物の奥深さに魅せられているといいます。
「うちに置いているどの子が旅立っていっても、いいコンディションで送り出した! と自信があります。どの子もかわいいんですよ。
おはよう、おやすみといった声かけは開店前、閉店後に必ずします。新たな植物を仕入れたら、まずは自宅で育て方を研究しながら、安定した生育状態になったのを確認して店に出しています。
2つくらい枯らしてしまい、3つ目でようやくすくすくと健康に育ってくれた、なんて子もいます。お客さまに購入いただいて、すぐ枯れてしまったら申し訳ないですし、枯らしてしまった、植物を育てるの向いてないかも、と気落ちされるのも避けたいなと。
家によって生育環境は異なるものの、基本的な育て方や注意点をお伝えできるよう、自分自身で植物たちと真剣に向き合って、面倒を見るようにしています」
子どものように愛情をかけて育てられた植物たち
西山さんが愛情を持って一つひとつの植物と向き合うのを傍で見ているYumさん。塊根植物の一種であるパキポディウム・グラキリスを店に並べたものの、西山さんは「もう少しだけ近くで見ていたい……! 早く売れてしまうかも」との強い思いや名残惜しさから、自宅に数日持ち帰ったのち、再び店に出したのだとか。
そこには「植物をたくさん売り上げたい」という経営者視点ではなく、植物を子どものように育てる保護者視点があるのを感じます。「この子はどんな特徴がありますか? 育て方は?」と尋ねると、店に置かれたどんな植物であっても、専門的ではなく平易な言葉ですらすらと答えてくれる西山さん。
植物との暮らしについていろいろと聞かせていただきましたが、最も印象的だったのは「植物が暮らしやすい環境は人も暮らしやすい」とのお話でした。
植物と一緒に生活することで意識や雰囲気が変わり、風通しの良い心地よい空間になっていけばいいなと、自分もprowntumeで買ったアデニウム・オベスムと暮らすいま、改めて思うのでした。
後編『「創りたいものを創り、小さな需要を満たすものづくりが合っていた」 – 平尾「prowntume」Yumさん』を読む
Text+Photo/池田園子