自分の身体を知って、豊かな日々を過ごしてほしい——薬院カイロサロンが目指すこと

薬院カイロサロン_薬院

身体になんらかの不調を抱えていない人はいません。程度の軽重は人それぞれですが、身体の使い方のクセやストレスなどから来る影響は大きいもの。

「いま自分の身体がどんな状態で、自分には何が合っているのかを理解できて初めて、身体の悩みを根本から見つめ、改善へと導いていくことができます」。こう語るのは、健康維持やメンテナンス目的でやってくる人が多い「薬院カイロサロン」代表の篠原望さん。

カイロとはカイロプラクティックの略です。骨や筋肉などのズレを正して神経の圧迫を取り、自然治癒力を最大限にはたらかせるよう、身体のバランスを整える施術のこと。月1回通っているというあるクライアントは「1聞いたら(望さんから)100くらい返ってくる」と笑います。

一人ひとりのクライアントと真剣に向き合い、「健康課題の解決力を育んでもらうこと」を目指す篠原さんに、サロンのことや施術者としての想い、未来の話などを伺いました。

篠原望さん

●サロン開業に至るまでの経緯は?

子どもの頃から美容に関心があり、4歳から高校時代までダンスを続けていたことから、美容とダンスが自分にとって縁の深い領域でした。高校時代にダンスインストラクターとしてアルバイトをしていたとき、怪我をしたことがターニングポイントとなりました。高校卒業後、美容でもダンスでも基礎になる身体のことを勉強しようと、カイロプラクティックを学び始めたのです。

当時はスクールに通いながら、講師のサロンで働く生活。スクールを出てからも勤め続け、当時は小顔矯正やダイエット、体質改善など美容系の施術をしていました。ただ、健康的にきれいになるには、突き詰めると身体のパフォーマンスを上げることが先決だと気づきます。そこで美容から健康へと軸を移し、東洋医学や心理療法など多様なセラピーを学んで、それらを施術に取り入れながら、2014年2月に自身のサロンを開業しました。

●施術で大事にしていることは?

クライアントにできる限りストレスを与えない施術を心がけています。たとえば「こっていますね」と強めに圧をかけてほぐそうとすると、身体が余計にこり固まってしまうものです。きつい言葉をかけられてびっくりすると身体がきゅっとこわばるのと同じです。人間に限らず犬や猫のような動物も、驚かされると身体がすくみます。

慢性的な不調を抱えてこられるクライアントは多いですが、たいていは防衛反応から身体が硬くなっています。だからこそ、力を抜けるように、そっと触れるようにしています。自律神経のスイッチが切り替わり、心身が和らぐような施術を細部まで組み立てています。お悩みが深いと痛みを感じるポイントもありますが、施術中にリラックスして眠る方も多いです。「寝ててか起きてたかわからない」とおっしゃる方も(笑)。

●コミュニケーションで大事にしていることは?

クライアントにいまの身体がどんな状態なのかを理解してもらうよう努めています。これまでコントロールできるのが当たり前だった身体が、突然思うようにいかなくなると不安や混乱が生まれるのも無理はありません。医療・健康業界を見渡すといろいろな対処法やアイテムが提示されますが、クライアントが自分にとってベターなことを自ら考える力を養うには、基礎知識と身体への理解が必要で、私はそのサポート役です。

私なりの考えですが、整体師=人を健康に導く人で、その方法は単に施術だけに留まりません。だからこそ、初診でも再診でも生活習慣や食事についてもお話を伺いますし、バランス調整後の効果が持続しやすいよう、時短・簡単なセルフケア方法を含め、いろいろなことをお伝えしています。ただ、注意しているのは「〜をしてください」という言葉は使わず、「〜はいいと思いますよ」くらいに留めること。

「してもいいし、しなくてもいい」という余白を残しているのです。「健康維持のためにがんばらないといけない」と思い込むと、自分を追い詰めて苦しくなってしまいます。クライアントには自分のできる範囲で実践していただき、自分らしい心身を取り戻してもらえたらと思っています。

身体、健康に関わるものを中心にいろいろな本が置かれている

●空間づくりで大事にしていることは?

くつろげる場であること。何年も前にサロンで音楽をかけることをやめました。普段私たちはいろいろな音がある世界で生活しています。でも、サロンがほっと息をついたり、ぼーっとできたりする場であってほしいと思い、あえて音をなくしているのです。「今自分のために時間をとっている」とリラックス感を味わっていただければと思っています。日々の緊張感から解放されて「しんどかった〜!」と言えたり、ちょっとした愚痴を吐けたりする場所でありたいです。

●サロン内で気に入っているところは?

待合室。この仕事なしには出逢えなかったであろう人たちと、多くの時間を共有してきた場所です。「先生」と呼ばれることもありますが(「篠原さん」とか「望さん」と呼ばれるほうが慣れていますが)、人がそれぞれ異なる背景を背負いながら前向きに生きていこうとする姿を見て、人が生きるとは何かを私自身が教えられてきました。

カウンセリングをしたり話したりするスペース

●クライアントからの言葉でうれしかったものは?

たくさんあります。たとえば「身体の変化に驚いた」「自分の身体や生活への意識が上がった」「睡眠の質が変わった」「メンタルが安定している」「コンディションが良くなって自分が変化したら周囲が変わり始めた(人間関係が入れ替わり出した)」「運気が上がった気がする」「繰り返していた不調から解放され、マッサージや整体に行く頻度が下がった」「太りにくくなった」「肌のコンディションも良くなり、若々しく見られるようになった」など。経営者や教育関係者、医療・福祉関係者、同業者、その他の業種含め、いろいろな方のケアをさせていただいて、たくさんの報告をいただき、ありがたいなと感じています。

●クライアントにどんな体験をしてほしい?

自分の身体について知ること。不調について理解すること。潜在的な可能性に気づくこと。人生をより豊かなものとして味わってほしい。

エントランスの目印もおしゃれ

●今後取り組んでいきたいことは?

大きく2つ始めたいことがあります。1つ目は「身体についてのお話し会」です。クライアントのなかには身体への理解を深めたい方も少なくありません。施術後にお話をしますが「もっといろいろ聞きたい」という方もいますし、「ここで学んだことを周り(家族やパートナー、友人など)にも実践したい」とおっしゃる方もいます。自身の健康管理や大切な人のサポートに役立てていただきたいなという思いがあり、今夏には始める予定です。

2つ目は「大切な人へのボディケア講座」です。親族の葬儀に参列したとき、グリーフケア(喪失の悲しみから立ち直れるよう支援すること)について深く考える機会がありました。たとえば死別なら変わり果てた姿を前に別れを告げる際、身体に触れることもあると思います。そのとき、相手が元気だったときを思い出して「もっと大切にできたのでは。もっと想いを伝えたり触れたり抱き締めたりしておけば良かった」と悔しく感じることもあるのではないでしょうか。

離別でも「もっと理解しようとできたのでは。もっと寄り添えたら良かった」と思うことがあるかもしれません。大切な人との別れには哀しみに後悔の念が伴うこともあります。そう考えると、誰かの存在とその人と関わってきた自分の一部をも失ったあと、その人に温かな気持ちで触れた愛おしい時間の記憶が宝物になり、喪失後の支えとして残ることもあるのかもしれないと思うのです。

痛みや不調や我慢は他人からは見えづらく、口に出されなければなかなか知られません。けれども労りの心を持って身体に触れることで、その声を聴けることもあります。講座を通じて「身近な方に触れてみよう」「その方の心身がゆるむような触れ方をしてみよう」と、大事な人に触れることの意味を伝えていきたいです。

クライアントの身体に触れることで、目に見えない痛みや身体の声に耳を傾け、それぞれに合った施術に取り組む篠原さん。真摯な姿勢を慕ってリピートする人があとを絶ちません。後編では篠原さんの人柄や個性に迫るインタビューをお届けします。

>>「薬院カイロサロン代表 篠原望さんってこんな人」に続く

取材協力/薬院カイロサロン

Text+Photo/池田園子

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