「縁ある人たちにとっての“良いエキストラ”でいたい」

薬院カイロサロン_薬院

薬院カイロサロン」は身体のズレを正してバランスを整え、自然治癒力を最大限にはたらかせることを目指す施術、カイロプラクティックを提供するサロンです。

2022年で開業8年目を迎え、多くのクライアントから頼りにされているのは、「自分らしい身体を取り戻し、すこやかに過ごしてほしい」という真摯な想いで営業を続けているから。

そんな薬院カイロサロンの代表 篠原望さんって一体どんな人なのでしょう? 人柄や個性にふれるような質問をいくつかしてみました。

前編の『自分の身体を知って、豊かな日々を過ごしてほしい——薬院カイロサロンが目指すこと』を読む

●子どもの頃、なりたかったものは?

初めて「なりたいもの」ができたのは3歳のころで、遊園地のうさぎ(着ぐるみ)に憧れていました(笑)。見た目や性別、年齢、国籍など関係なく、人を喜ばせられるところに惹かれ、いまでもそうありたい(自分が関わる人に喜んでもらいたい)気持ちは変わりません。

10代になってからは、ダンサーや演出の仕事に就きたいと思っていました。4歳でダンスを習い始め、高校時代はダンスのインストラクターとしてアルバイトをしていたくらいです。1日8時間くらい踊っていました。

●今の仕事を知ったのはいつで、どんなところに魅力を感じた?

高校卒業前です。ダンスで膝の半月板を損傷する怪我をしたタイミングでした。高校を卒業してからは、カイロプラクティックのスクールに通いながら、ダンススタジオ立ち上げメンバーとして、受付やインストラクターのボディメンテナンスをしていました。

カイロを極めるにあたり、学び続けて19年目になるのが解剖学という学問です。筋肉や骨をはじめとする身体の組織や器官の関係や構築に関わる分野ですね。学び始めて10年でサロンを開業しましたが、最初の頃は終わりが見えなくて逃げ出したかったくらい(笑)。生きている間に勉強が終わらないのではと思うほど学ぶことが膨大にあり、「身体の研究とは人を取り巻くすべてとの対峙である」と気づいてからは、飽き性の私ですがいまも夢中です。

解剖学を通じて、身体の不調はバランスや使い方、栄養状態、メンタルなど、さまざまな要素と複雑に関係していることを知りました。それらの学びを総動員しながら、道具を使わず自分の心身でサービスを生み出し、クライアントから面と向かって感謝を伝えてもらえる仕事にやりがいを感じています。

●ご自身でビジネスを立ち上げて得た気づきは?

物事の捉え方や人間関係は自分次第でまるきり変わるので、視野を広げて自分自身に疑問を持つこと、ゆらぎの中でコンディションを保つことでしょうか。

今でこそ、少しは余裕を持てていますが、経済的に苦しい時期や心身が追いついていかない時期もありました。続けていけるだろうかと無力感をおぼえたこともあります。また、好奇心が多方向に向いてしまう性格なので、ひとつの仕事に情熱を注ぎ続けるのは難しいタイプだと自覚しています。心が動くテーマには何時間でも向き合えるのですが。

それでもなんとかやってこられたのは、クライアントがいろいろな課題を持ってきてくれたからです。おかげさまで、それぞれの難題をクリアする方法を見出すため、常に全力を注いでこられました。また、落ち込んだときは不意に助け舟を出されることが多く、気にかけてくださる方たちに恵まれていて、運が良いなとも思います。

施術スペースのそばには身体に関するさまざまな資料が貼られている

●困ったことが起きたときの対処法は?

専門知識が必要なことであれば、弁護士なのか税理士なのか、その分野の専門家に相談します。知識の量や質には偏りがあり、誰から何を聞くかという視点はいつも意識しています。悩んだところでどうにもできないことは、まずは考えることにフォーカスします。壁が何かわかれば、壁の乗り越え方を調べればいいわけです。

知識や経験がないことであれば、不安になってしまうものですが、感情の処理は問題解決が終わってからでも遅くはありません。人は安心できる場所から外へ飛び出すとき、恐怖やパニックを抱くことがありますが、それは自分を守るための防衛本能が働いただけです。壁を乗り越えていい環境に近づいていくチャンスだと捉えて、不安に感じた自分を認めてフォローしつつ、ポジティブに向き合っていくといいと思います。

●ご自身が目指す生き方は?

「縁のある方たちにとっての良いエキストラになること」です。父から「望」という私の名前の由来を聞いたことがあります。当時は、結婚して子どもを産むことが女性の幸せとされていましたが、父は「娘自身が望む道を自ら作り歩んでいってほしい」という思いを込めて、望と名付けたそうです。

「君は生まれたときから中心にいて、僕は君のエキストラなんだ。君の人生は君が主人公の映画で、周りの人は皆エキストラなんだ」と。父のそんな想いを聞いたのはわりと最近ですが(笑)、「縁のある方たちがすこやかな状態を保てること」をベースに行動しているなあと思います。

身体に関することを聞かれたら、私がわかる範囲の情報はすべてお伝えしますし、調べてあとでご連絡することもあります。出し惜しみはしたくないので、エネルギーに余力がある限り、一人ひとりに必要な情報をお渡ししていきたいです。

●ご自身が大事にしている言葉や考え方は?

「何かを始めたら何かしら起こる(良くも悪くも)」

「お客さんを大事にしなさいね(祖父の言葉)」

「美意の按配(起きることすべてには意味があり、何事も神様の采配。良くないことが起きても、それは後々良い結果につながるための出来事)」

「なんとかなる」

篠原望さん

●ご自身にとって「幸せ」「成功」とは?

「幸せ」かどうかは心のあり方次第だと考えていますが、自分ひとりで幸せになるのはなかなか難しい面もあります。自分と縁のある方や周囲が幸せであれば、私自身も幸せを感じます。たとえば、サロンに来ていただくようになってから、「心身が楽になって人生が変わった」とおっしゃる方がいます。

悩みを抱えた方がいい方向へ進む一助になれたとき、ありがたい仕事をさせてもらっているなあとつくづく感じます。また、そのおかげで自分にも余裕ができて、さまざまなことを味わえること、穏やかな気持ちで過ごせることに喜びを感じています。

「成功」は求めればキリがないし、成功の一線はわかりません。ただ、ゆっくり眠れる場所があり、美味しいものを食べられて、人に恵まれて、こうしてサロンを構えていられて、これ以上に求めることは果たしてあるだろうかと思います。

●この先、挑戦していきたいことは?

福利厚生の一環として「従業員の身体ケア」を取り入れている企業に伺うことがあります。希望者に対し1人10分単位で施術をしていくものです。もちろんクイックな改善は見込めますが、根本からパフォーマンスを上げるには生活面の聞き取りも必要になります。

数ヶ月に一度10分の施術では限界があるため、サロンと連携しながら進めるのが理想です。施術と合わせてカウンセリングや講座も行い、総合的なサポートをできる仕組みを提供したいですね。そのなかで、自分の身体に投資することや健康管理を自発的に考えることの大切さに気づいてもらえるような社会的な啓蒙ができたらいいなと思います。

●サロンを持ちたい人にメッセージを

今はレンタルサロンやシェアサロンを使ったり、店舗を持たず出張したりと、いろいろな手段があって、資金が限られていても起業しやすくなっています。一方で業界は飽和状態にあるのが現実で、それくらいたくさんのサロンがあるということ。

ただ、他と比較したり、同じようにしなければと思い込んだりする必要はありません。もちろん揺らぐこともあると思いますが、クライアントとどんなスタンスで向き合いたいのか、自分が譲れないことは何なのかを、サロンを始めることにした動機や原体験と合わせて考えれば、自然とぶれなくなるのではないでしょうか。たとえば、私のサロンは生産性や効率化とは真逆を行っていますが、私のやり方は私にとっての正解といえます。

いまは前例を気にする必要のない時代です。他人は自分が思うほど私のことを気にしてないと祈りつつ、自分を信じて、やりたいことをやってみたらいいのかなあと。失敗したり、恥かいたりしたところで自分も他人も忘れる生き物ですし、時が経てば人のご縁も入れ替わり、過去を知る人は周りにいなくなるかもしれません。何より、自分を信じることは大事です。周りが信じて、応援してくれるのは、自分を信じている人ですから。

篠原望/薬院カイロサロン代表。薬膳や漢方が好き。自然に囲まれた地域で薬草を摘みながら生活し「薬草スナック」を開業するのが少し先の目標。

取材協力/薬院カイロサロン

Text+Photo/池田園子

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