右も左もわからない中で福岡に移り住み、中央区白金に「ブックバーひつじが」を構えて早数年。暮らしやすさがこれでもかと言わんばかりに凝縮した街の中で、ふにゃふにゃと日々営業を続けています。開店までの時間はご近所を散策することが多く、その中でもおそらくいちばん足繁く通っている、ひつじがから徒歩40秒にある大好きなカフェ「area coffee（アレアコーヒー）」さんを今回ご紹介します。
白金交差点から程近く、人気のラーメン屋さんや居酒屋などが入った建物の一画にあるアレアコーヒー。コンクリートの壁を基調とした外観は至ってシンプルですが、中に入ればその外観とは対照的なピスタチオカラーの壁が目に飛び込んできます。店内の至る所にフィギュアが飾られていて、おもちゃ箱の中に入ったような異世界感。もう楽しいです。
ドリンクの種類が豊富で毎回なにを飲もうか迷ってしまいます。SNSでも度々話題に上がっている看板メニューの「氷結イチゴミルク」は凍らせたいちごを潰して混ぜながら食べるのが面白く、キンキンに冷えたグラスで出してくれるハイボールは全ての疲れを吹き飛ばしてくれます。ビーカーに入った可愛いプリン（俺P）やあんバターマフィンなど小腹を満たすスイーツもあって、金曜日にはカレーが出たり不定期で定食メニューまであるし……どれもこれも魅力的すぎて。束の間の葛藤を楽しんで、いつ行っても笑顔で出迎えてくれる店主の天久（あまく）さんに注文して、あとは空いている席を見つけて座り、穏やかな気持ちで品が出てくるのを待ちましょう。
注文品が出てくるまでの間にアレアコーヒーとの思い出話を少々。出会いは数年前、まだ開業準備をしている頃に遡ります。その日は勢い余って大きく作りすぎた店の本棚を組み立てることができず店内でひとり途方に暮れていました。今でこそ知り合いと呼べる人たちもいますが、その当時はまだ福岡に来たばかりで頼れる人もいなくて、そんな中で辛うじて少し前に知り合ったとある作家さんからちょうど「今からアレアに行くけど近くなので暇してたら一緒に行きません？」と誘われ、ホイホイついて行ったのが全ての始まりでした。
初めてお邪魔したアレアコーヒーの中にはその当時から笑顔が眩しかった天久さんの他に数名の作家さんがいらっしゃって、合流するや否やビールで乾杯。知らない人ばかりだったので自己紹介がてら本棚が組み立てられない話をしたら「今からみんなで行って組み立てましょうよ」と、そこにいた作家さん全員が手伝ってくれました。まさかの展開に驚き、こんな人たちがいる白金は素敵な街だと感動したのを今でも鮮明に覚えています。あの日アレアコーヒーに行ってなかったらどうやって本棚を組み立てるつもりだったのか。
その後も徒歩数十秒の距離にあるのをいいことに、何かあれば足を運び、何もなくても何かと理由をつけて足を運び、理由がなくても足を運び、いつの間にかなんでも相談してしまうご近所の先輩的な存在になっていました。近隣の店舗合同で巡回アートイベントをやったり、料理も上手な天久さんがひつじがに出張して餃子を焼きに来てくれたり（亜霊亜餃子）、なぜかひつじがにあるDJ機材を使ってゆるい催しを開いたり、度々合同企画をしていただきながら、アレアコーヒーに来られる人たちに少しずつひつじがの存在も知ってもらい、そのおかげでじわじわと中央区白金に浸透していくことができました。ほんと足向けて寝られないや……。
……今も実際にアレアコーヒーにお邪魔してこの文章を書いていますが、思い出話に花を咲かせているうちに注文の品が出てきました。ついさっきあれもこれも魅力的と煽っておいてなんですが、アレアコーヒーに来たらまず飲んでほしいのがハンドドリップのコーヒー。その時々で厳選された豆を丁寧にドリップしてくれるのがまたなんとも言えない贅沢で、ホットもアイスも抜群に美味しいです。珈琲激戦区の中央区白金エリアでも随一のコーヒーを味わってみてください。
注文して珈琲を待っている間にも近くにあるカフェの人たちが入れ替わり立ち替わり来店されて、天久さんも混ざっておしゃべりが止まりません。近くに住む人たちと気軽に喋れるのも白金エリアの楽しいところですが、ここまで自然と人が集まってくるのは天久さんの気さくなお人柄あってこそ。白金散策の拠点として、ご近所さんとのおしゃべりの場として、一度訪れたら病みつきになること間違いなし。皆様もぜひ白金、アレアコーヒーへ。
ショップ情報／area coffee（アレアコーヒー）
住所：福岡市中央区白金１-10-３
営業時間：（平日）12〜22時（日・祝）12〜18時
定休日：火曜日
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Text／シモダヨウヘイ
中央区白金で「ブックバーひつじが」を経営。2018年福岡に移住。できることよりできないことの方が圧倒的に多いが、買ったばかりの白い服に食べ物の汁をこぼすのだけは得意。
