2021年夏、薬院にあるバー「ライカード」オーナーバーテンダーの住吉祐一郎さんと共に、長崎県の壱岐島を訪れたことがあります。住吉さんがある雑誌の取材のために行くことを取材前日に知り、「ついていきます!」とお願いしたんです。
取材の目的は壱岐にある焼酎蔵が作ったクラフトジン。壱岐には7つの焼酎蔵があり、「麦焼酎発祥の地」として知られています。そんな壱岐の藏元のいくつかがクラフトジンを作り、話題になっているんです。
蔵を訪れ、インタビューをしながら、ジンを試飲させていただくことになりました。用意されたのはたくさんのグラス。ソーダやトニックといった割り剤のバランスで「香りの開き方」が変わるらしく、様々なジンと割り剤でテイスティングが進んでいきます。
正直、私はお酒の味に関してはそこまで詳しくないので、ティスティングなどをしてもコメントをする自信がありませんでした。そもそもコメントをする必要がない立場なのですが、住吉さんの取材をちょっとでもサポートできればという思いだったんです。
ところが、住吉さんが割ったジンを飲み比べてみると、「ソーダとジンの割合を変えるだけで、こんなにも香りの広がり具合が違うのか」と、ジンへの関心が一気に高まりました。そんな私を横目に住吉さんと酒蔵の方はジン作りのこだわりなどで意見交換をしています。そんなレベルの高い話を聞きながら、「もっとお酒のことを勉強しないとなぁ」と思ったものです。
ひとしきり取材を終え、一緒にいただいた晩ご飯は、地元の寿司店「乃もと寿司」。高齢のご夫婦で切り盛りしていて、ビールを飲みながらお寿司に舌鼓を打ったのはよい思い出です。
そんな住吉さんがライカードのカウンターに立つと一変します。いい意味で私をお客さまとして迎えてくれて、完璧な接客をしてくれます。重厚な雰囲気の中で作ってくださるボウモア12年のソーダ割りは、ほかのどのバーよりも美味しくいただいています。
「大切な友人との語らいはライカードのカウンターで」と決めている私です。もしカウンターに私と誰かがいたら、「あ、この人は木村の大切な友人なんだな」と思ってもらって構いません。それほど極上な空間なのです。
Text/Kimihiro Kimura
合同会社TEENAGE EMOTION代表。「いいモノは須く世に広まるべきである」をミッションに掲げる広報PRプランナー。放送作家として15年活動した後、東京から福岡に移住。めぐるね白金の生活圏である博多区中洲に住む東京と福岡のハブのような役割を果たすという目標を掲げ、東京から来た友人のアテンドも、ほぼ毎月こなしています。Twitter note