東京で活躍する知り合いのシンガーソングライター・高田由香さんから、福岡でミニライブを開きたくて場所を探している、という相談があり、私もツテを伝って探していたところ紹介していただいたのが始まりです。
初めて訪れたときの印象は「なんだここは!?」。
場所は、高砂と平尾の間の大宮地区。高砂平尾線の道路沿いにお店はあります。その名は「あめり軒」。
恐らく、店の前を通ったことがある方は多いでしょう。そしてこう思っているかもしれません。
「この店、何のお店だろう」「オープンしているのかな」「見た目アメリカっぽいけど中はどんな感じになってるの……?」
細長いビルに、細長い入口。アメリカンな看板に、多彩なメニューが施された外観。そもそもお店は営業しているのか……。
安心してください。開いてます!
白金周辺の何を題材に、7月の連載を書こうかと考えていたときに浮かんだのは、このお店のマスターの顔でした。とにかく明るいマスター。今回はそんな「マスター」と「あめり軒」のお話です。
まずは、何と言っても、この店の看板、マスターのご紹介から。
マスターの山内直治さんは御年58歳。超絶明るいキャラクターで、ライブ会場を探していたときに二つ返事でこたえてくれた、気前のいいマスターです。
元々は航空運輸を扱う会社の拠点長を務めていたエリートサラリーマン。超絶しゃべりがうまいのは、当時トップ営業マンだったが故かもしれません。
いつか大好きな鉄板焼のお店を開きたいな、と思いながら、出張の折に全国の鉄板焼屋を回って、その技と味を盗んでいったマスター。
その後、サラリーマンの仕事に達成感を感じて、退職。念願のお店を開こうと探していて出会ったのが、今の場所、平尾・大宮の空店舗でした。
32坪という広さと鰻の寝床のような細長い独特の作り。そして、高い天井に加えて、家賃が安かったのが決め手でした。
今や人気の平尾エリアで家賃が安かったというのに驚いていると、「いやいや、26年前なんて、この辺りは何にもなかったんですよ」とマスター。
「あめり軒」は1998年6月にオープン。コンセプトは、沖縄の米軍基地近くにあるバー。
航空運輸の仕事で沖縄へ行くことが多く、ベースの周辺の町や外国人バーの雰囲気が大好きで、お店を開くならこうしたいと、ずっと構想を膨らませていたそうです。
店内はアメリカの雑貨や装飾で、ちょっと海外に来たような感じ。(しかし! マスターはアメリカへは行ったことがないとのこと!)
26年前、「あめり軒」の周りには、ポツリポツリと民家があるくらい。また、渡辺通から離れていることもあって、お店も数えるほどだったとのこと。
ぼちぼちお客さんが来て、お店も増えだしたのが2008年のリーマンショック以降。世界的な株価下落の一方、土地や物件が比較的手に入りやすくなり、飲食業への参入が一気に増えたそうです。
また、この平尾・大宮エリアは、渡辺通などの主要道路から離れていたことが、逆に当時の「隠れ家ブーム」の波に乗り、店舗の数は一気に増えていきました。今や「あめり軒」も、この界隈では「老舗」のお店になるそうです。
時代が流れる中で、26年もお店を続けていられるのは、ひとえにマスターの人柄の良さと料理のおいしさ。
コロナ禍の中、大きな打撃はありましたが、それでも多くのお客様が支えてくれたとマスターは言います。
近所のママさんバレーの仲間たち、同窓会など大人数で使ってくれる会社員。昔の会社仲間、そしてその仲間の仲間など……お店のファンも多く、博多華丸・大吉さんもそのひとり。若手の頃からたびたび来ていて、また華大さんの紹介で多くの芸能人がお店を訪れています。
ちょうど僕がおじゃましたときも、常連のご家族が来ていて「マスター、これ食べてよ!」と差し入れを持ってきていたのは、マスターがお客さんから愛されている姿を垣間見れた瞬間でした。
人柄にばかりふれてきましたが、26年も続いているのは、もちろん料理がおいしいから。なんとそのメニューの数100種類近く。
先日、僕がお邪魔したときにいただいたのは3品。
「アボカドディップサラダ(¥590)」は、注文が入ってからアボカドを切って練るので、フレッシュそのもの。作り置きはしない、というマスターのこだわりです。
お店の人気メニューは「自家製秘伝ソースの豚焼きそば(¥790)」。そのソースは、なんと26年継ぎ足しという、お店秘伝の味。
一口入れると「あぁ、子どもの頃、お店で食ったことあるわぁ」という、なんとも心に懐かしさがあふれます。シンプルですが、ホッとする味です。
そして、僕が必ず注文するのが「大ぶり豚ロースのしょうが鍋(¥890)」。博多華丸さんのおすすめメニューとしてテレビ番組「アメトーーク!」でも紹介されました。
ネギたっぷりで、具材の厚揚げもマスター手作りというこだわり。熱々をホフホフしながらぜひご賞味あれ。逆に夏だからこそ食べたい逸品。生姜が効いていて、夏バテにもピッタリです。
マスターにこれからのことを聞いてみると、今後は郊外への出店をはじめ、ほかにもいろんな構想があるようです。そのバイタリティーには頭が下がるばかり。
ぜひお店に、マスターに会いに行ってください。いつの間にかお腹は満腹に、ココロもいっぱい満たされると思います。もしかすると「あめり軒」は、笑顔と元気になれるお店なのかもしれませんね。
取材協力/あめり軒
住所 福岡市中央区大宮2-1-25 1F
Web、Instagram
Text/ミノツ ナヲフミ
東京でテレビ番組の演出を経て、長崎ハウステンボスへ転職。H.I.S.体制の元、宣伝とPR面から経営再建と地方創成を行う。2020年より白金の総合プロダクションLAPへ入社。仕事そっちのけで近所のおいしいものばかり探している。その合間にテレビやイベントのプロデューサーや企業コンサルティングなどを行っている、らしい。長崎県佐世保市出身。
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