「今日はどれをつけようかな」。装いに合わせて選んでいる瞬間も、身につけている間も心躍るジュエリーやアクセサリー。
そんな感覚がある私は、街を歩いているときにジュエリーショップを目にすると、引き寄せられてしまいます。もちろんすべてのお店ではなく、自分の感性を刺激してくれるお店に限ります。
薬院のアクセサリーショップ「Decorate me」も惹かれるお店でした。何度か立ち寄っていたカフェ「CAFE DELTA」と同じビルにあり、シンプルで控えめな看板によって、2階の奥にショップがあることは知っていました。
階段に置かれていた小さなカタログを持ち帰り、後日初めてお店に入って買ったのは「武器 ネックレス」です。温かみのあるやわらかな照明が落ち着く店内と、同じく温かい接客が印象的でした。
流行や年齢にとらわれない、普遍的で長く使えるデザイン、それでいて意思を持って選んだ人が、自分らしさや程よい個性を楽しめるジュエリーを生み出しつづけるDecorate me。薬院の地で12年に渡り、ファンから愛される背景を探ります。
薬院で愛されるジュエリーショップ
Decorate meの始まりは2004年に遡ります。中央区にあるマンションをリノベーションして、アトリエを構えました。そこでジュエリー制作が始まり、2006年にはジュエリーブランド「satela(サテラ)」、アクセサリーブランド「a.g.t.a.m(アグタン)」が立ち上がります。
どちらのブランドも全国のセレクトショップや百貨店に卸すようになり、2008年には株式会社デコレイト・ミーが創業。2010年には薬院に直営店舗(Decorate me)がオープンしました。同社代表でデザイナーを務めるのは林裕之さん。
18歳頃から趣味でジュエリーを制作するようになり、22歳くらいの頃、とあるジュエリー工房が社員募集をしているのを見つけて応募。「アルバイトでいいので働かせてください」とお願いし、4年ほど修業しました。
身に着ける人の想像力をかき立てたい
Decorate meで展開される2ブランド、satelaとa.g.t.a.m。林さんが手掛けるsatelaからは、一年に一度(毎年12月)約40種類の新商品がコレクションとして登場します。パートナーの仲西さや香さんが手掛けるa.g.t.a.mからは、春夏/秋冬のシーズンごとに新作がお目見え。
これまで12回に渡り、何らかのテーマをもとにコレクションをリリースしてきたsatela。一体どのようにして制作が進んできたのでしょうか。林さんは大きくは「自然」から着想を得ていると話します。
「たとえば今年は“水の中”を大きなテーマとして設定するとします。それからクラゲやイソギンチャク、泡など、テーマに関連するキーワードを出していき、物語を決めるんです。ここ2〜3年は自然のほかに、古代のモチーフからもヒントをもらっています」(林さん、以下同)
テーマは作る側だけに必要な要素で、お客さまに詳しく伝えることはしていません。お客さまが「これは水をテーマにしたアクセサリーに見える」と思えばそれでいい。
林さんは自身の生み出すジュエリーを通して、「身に着ける人の想像力を刺激したい」「『これを着けたらこんな自分になれそう』とイメージしながら楽しんでほしい」と願っているのです。
目指すのは「特別な時間を楽しんでもらえる場所」
女性のお客さまが多いDecorate me。自分のためにジュエリーやアクセサリーを買いに来る女性が目立ちますが、しばらく経つとその女性がお母さまや親戚、友人などの親しい方、また、パートナーを伴って訪れることも珍しくないといいます。カップルで訪れる場合、よくオーダーされるのは結婚指輪(※)です。
※制作期間は約1ヶ月、で結婚指輪の金額はペアで12万円~17万円ほど。セミオーダーも可能なので詳しくはご相談を。
オーダーを受けるにあたりDecorate meが大切にしているのは、綿密にヒアリングしてお客さまの要望を満たしつつ、バランスの良いものを作り上げること。現在アルバイトも含めて5人のチームであるDecorate meではオーダーに限らず、作り手や販売側としての感性や流行を押し付けないことを意識しています。
「もし『おすすめは何ですか?』と聞かれたとしても、まずはファッションの好みやライフスタイル、身に着けるシーンなど、さまざまな質問を通じてお客さまのことを聞かせていただき、何に対してのおすすめを求めておられるのかを理解します。その上で提案させていただいています。
そうすれば、お客さまに最適な“おすすめ”を提示できるでしょうし、心地よく感じていただける接客につながると考えています。また、私たちが理想とするお店として成長していけるのではないかとも思うのです」
Decorate meが目指すのは、買い物という行為を一人はもちろん、大切な人と共に楽しみ、思い出の時間を過ごした場所として刻まれる空間になること。ジュエリーやアクセサリーを買いにいくのは何かの節目や気持ちを上げたい特別なとき、という人も多いでしょう。だからこそ、スペシャルな時間を過ごしてもらえる場所でありたい——。Decorate meの進化はつづいていきます。
後編『「お客さまにワクワクしてもらえる場所でありたい」-薬院ジュエリーショップ「Decorate me」の想い』を読む
取材協力・写真提供/Decorate me
Text・一部のPhoto/池田園子