「創りたいものを創り、小さな需要を満たすものづくりが合っていた」 – 平尾「prowntume」Yumさん

平尾の「prowntume」は多種多様な植物が揃うお店ですが、店内にはジュエリーやアクセサリーも並べられています。ご夫婦で営むprowntumeで、ジュエリー作家として活動するのはYumさん(@yum2006)です。

2014年にジュエリーや洋服を取り扱うお店としてオープン後、2021年からは植物の販売もスタートしたprowntume。「子どもの頃の『雑貨屋さんになりたい』という夢に近づきつつあります」と微笑むYumさん。お人柄に迫る質問をしてみました。

●子どもの頃、なりたかったものは?

Instagramの名前にも使っている「創る人」になりたかったです。創ること、なかでも現在の活動につながるレース編みは小学生から始めて、そのときの道具たちはいまも現役です。

1本の糸から立体を編めること、撚り合わせて1本にした糸は縫う・編む・織る・刺す……いろいろな方法でものづくりできることに面白みを感じてきました。

レース針を使う基本的なレース編みのクロッシェレース、優美な仕上がりが特徴的なタティングレースなど、技法が違うとまた異なるタイプの作品ができるのも楽しいです。

レース編み歴はとても長くなりましたが、いまでも魅了されています。

●独立を決めた背景は?

昔アパレルメーカーに勤めて企画営業や事務を担当していたのですが、「自分の手でものづくりをしたい」と強く思ったのがきっかけでした。

メーカーでは展示会のサイクルに合わせて、売れる可能性が高いものを計画的に生産していきます。自分が心からいいなと思うものを提案しても、企画会議に通るかどうかはわかりません。

創りたいものを創るために、自分がブランドオーナーとして責任を持ってものづくりをする方法を選びました。本気で創りたいものを創ると「好き!」「欲しい!」と喜んで身につけてくれる方は、世界にひとりは必ずいると思っています。

2006年から個人で活動してきたなか、自分が本当に創りたいものを創り、小さな需要を満たすものづくりが私には合っているなあとも感じています。

月と人魚のイヤーカフ装着写真(三日月側)

●インスピレーションはどこから得ている?

自然の風景や日常で目にするものから得ています。たとえば「月と人魚のイヤーカフ」は片面は三日月、片面は月夜の海で人魚が跳ねたときの水しぶきを表現しています。

私自身、現実と空想の間を行き来しながら生きている感覚があって、同じものを見ても人とは違う見え方をすることがあります。それは創作活動に生きているかもしれませんね。

月と人魚のイヤーカフは、月があたりを照らす、幻想的な雰囲気の夜を過ごしたとき、自分のなかで生まれた人魚のストーリーを具体化していったものです。現実と空想から生まれたものを形づくる時間が大好きです。

●ご自身が大事にしていることは?

1つは周囲への感謝の気持ちを忘れないことです。私は出会う人たち、関わる人たちに恵まれていて、巡り合わせがいい方だと思っています。

独立直後に大きなコレクションに呼ばれたり、企業展示会や百貨店での展示にお声がけいただいたり、「Yumさんの世界観が好きだから」とオファーをいただいてオブジェを製作したり、人のおかげで多岐に渡る仕事をさせていただいてきました。

もう1つはクオリティを落とさないこと。私の創るジュエリーを目にした方から好き、いいなと思ってもらえるかどうかは「運」だと考えていますが、自信を持って出せる、妥協のないものづくりをする姿勢は今後も貫いていきたいです。

夫で仕事上のパートナーでもある西山さん(prowntumeの植物担当)と

●今後の展開は?

まずは自分の技術を向上させ、クリエーションの幅を広げていきたいです。そのために彫金の学び直しをしていて、需要の多い18金でのジュエリー制作にお応えできるようになることが当面の課題です。

お店としては、ジュエリー、アクセサリースペースをもう少し拡張したいところです。いまは在庫も少ないのですが、品質を維持しながら取り扱い個数を増やして、店舗でのお買い物も楽しんでいただけたらいいなと思っています。

同時にブランドの世界観も丁寧に伝えながら、手をかけてものづくりを続けていきたいと考えています。

前編『いきいきと育った植物と、身に着けて笑顔になれるジュエリーと – 平尾「prowntume」』も読む

取材協力/prowntume + @yum2006

Text+Photo/池田園子

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